コラム
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見込みのある顧客にアポを取り担当者に合うことはできても、なかなか成約につながらず悩んでいる営業パーソンは少なくありません。営業活動は先方担当者とのコミュニケーションが何より重要ですが、安定的に成約率を上げるためには、部署全体で営業プロセスそのものを見直す必要もあります。今回は目標にしたい成約率の目安と、営業部がチームで取り組むべき具体的なアクションについてご紹介します。
目次
新規顧客を開拓する際は、電話やメールなどで反応を見て、見込みのありそうな顧客のもとへ営業担当者が訪問し、個々のニーズをヒアリングするというケースが多いでしょう。この時、商談の席につくことだけを考え、アポの件数をひたすら増やすというのはあまり効率的ではありません。
ある調査では、電話による新規開拓営業の場合、平均して18回の電話をかけないと先方の担当者と会話ができないことを示す結果が出ています。また、メールの場合は24%しか先方の担当者に開封してもらえないというデータもあります。営業パーソンは、気が遠くなるほどの苦労を経て先方を訪問するわけですが、それでも顧客と商談する段階から実際に成約に至る割合は30%弱、高くても50%程度と言われています。
一口に営業と言っても、販売する商品の特性によって営業手法は異なります。しかし、ほとんどのケースで言えるのは、売上目標をクリアするには営業を行う分母を増やすこと同時に、成約率の底上げを図るアクションが必要ということです。
成約率は営業テクニックを活用することで高められる可能性があります。具体的には、クロージングで営業テクニックを活用するとよいでしょう。クロージングの概要と活用できる営業テクニックを紹介します。
営業の成約率を高めるため重要になるのがクロージングです。クロージングは営業活動で顧客と契約を結ぶこと、または契約を結ぶために必要になる最後の工程を指します。参考に一般的な営業活動を分解すると以下のようになります。
【営業活動の流れ】
営業の成約率を高めるためクロージングが重要になる理由は、失敗するとヒアリングから解決策の提案まで順調に進んでいても契約に結び付かないからです。例えば、クロージングに失敗すると顧客から売りつけられていると捉えられて契約に至らないことや、顧客の背中を押せずに契約に至らないことなどがあります。クロージングは営業活動の中で最も重要な段階といえるでしょう。クロージングの質は営業テクニックを活用することで高められます。活用できる代表的な営業テクニックは以下の通りです。
【クロージングテクニック8選】
それぞれについて詳しく解説します。
テストクロージングとは、文字通りクロージングをテストすることです。商談の途中で成約の意思を確認すると言い換えてもよいでしょう。具体的には「いま契約するとすればどの仕様が良いですか?」「ご提案書の金額は予算内に収まっていますか?」などの質問を投げかけて成約の意思を確認します。テストクロージングを行うことで、顧客の不安や疑問が明らかになるため、契約しない理由を失くしていけます。また、顧客の希望に沿った条件に調整することで契約の意思を高められます。
ドア・イン・ザ・フェイスは、最初に過大な要求をして断られてから、本命の小さな要求を提示するテクニックです。借りができたら返さなくてはならないと感じる返報性の心理を応用しています。具体例として以下のケースが挙げられます。
店員
「こちらの商品はフル装備で20万円です」
顧客
「機能はすごいけど我が家には少し高いかな…。」
店員
「では、お客様にとって不要な機能を除いて10万円であればいかがでしょうか?」
顧客
「10万円であれば買います。」
不要な機能を除いて値下げしたことで、顧客は店員が譲歩してくれたと感じます。店員の譲歩に対し返報性の心理が働くため、購入に至る可能性が高くなるのです。
メリットとベネフィットの提示も営業の成約率アップに役立ちます。ここでいうメリットは製品の特徴、ベネフィットは製品の特徴が顧客に提供する好ましい変化です。参考に、ダイエット器具のメリットとベネフィットを紹介します。
【ダイエット器具のメリット・ベネフィット】
メリット | ・全身運動で効率よく痩せる |
ベネフィット | ・自分に自信を持て生活にハリが出る |
メリットに加えベネフィットを提示することで、変化をイメージできるため契約の意思が高まります。
BANT条件は、顧客の見込み度を評価するフレームワーク(ヒアリングのテクニック)です。主に法人営業で活用されています。BANTは以下の頭文字を表します。
【BANT】
B:Budget(=予算)
A:Authority(=決済権)
N:Need(=必要性)
T:Timeframe(=導入時期)
BANT条件が揃わないと基本的に商談は成立しません。したがってBANT条件を用いることで、顧客に優先順位をつけることや成約の障害を把握すること、効果的な営業戦略を立案することができます。
選択肢の提示も営業の成約率アップに役立ちます。顧客の多くは、納得するために複数の選択肢を比較したいと考えているからです。複数の自社プランを提示してもよいですが、可能であれば競合他社プランを提示すると顧客の満足度アップにつながります。顧客の選択肢は自社製品に限られないからです。競合他社の製品と比較する形で、自社製品の優位性をアピールするとよいでしょう。ただし選択肢が多すぎると、顧客を混乱させてしまう恐れがあります。一般論になりますが、選択肢の数は3つ程度が理想といわれています。
ゴールデンサイレンスは、最終的な提案が終わってから顧客が沈黙していることを指します。例えば、営業マンが「ご注文いただけますか?」と尋ねてから、顧客がしばらく黙っていることなどが該当します。顧客が沈黙する多くの理由は、真剣に検討しているからです。不安になった営業マンが話しかけてしまうと、購買意欲を失ってしまうことがあります。したがってゴールデンサイレンスは、基本的に邪魔するべきではないと考えられています。意図的に何もしないことで、営業の成約率を高められる可能性があるのです。
ホットボタンは、顧客が製品を購入する第一の理由です。押されると思わず購入してしまうボタンといってもよいでしょう。担当者のホットボタンを見つけて、解決策で押下することにより営業の成約率をアップできます。例えば、待ち時間の長さに悩む店舗であれば「待ち時間の解消」がホットボタンと考えられます。したがって待ち時間を有効活用できる電子看板システムなどを提案できれば、成約に結び付く可能性が高いといえます。
ペーシングは、話し方、呼吸、状態を相手のペースに合わせるコミュニケーションテクニックです。具体的には、話すスピード、声の大きさ、呼吸のリズム、感情の起伏などを相手に合わせます。ペーシングを行うことにより、一体感が生まれるため信頼関係を築く効果が期待できます。つまり話しやすい状態を作り、商談を進めやすくなるのです。前向きな雰囲気を作りたいときに活用したい営業テクニックといえます。
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営業活動が社員個人のスキルに依存する形になっていると、もともとスキルが高い社員と他の社員の成約率に差が生じ、部署全体の業績がなかなか伸びないということが起こりがちです。全体の成約率が30%に満たない場合は、営業社員個人の資質や努力よりも、部署のマネジメントに改善すべき点があると言えます。ここでは部署全体の成約率を高めるために管理職ができる取り組みを3つご紹介します。
営業パーソン個人の達成すべき数値目標が「売上」しかない場合は、案件数やアポイント数、契約数といったアクションごとの数値目標も明確に設定しましょう。現状の数値と目標数値とのギャップが明らかになると、営業プロセスの何に注力すべきかがわかり、各営業パーソンの意識も変わります。
数値目標を設定した後は、営業部長、課長もしくは係長が進捗状況や達成率を定期的に確認し、目標達成のための戦略を立ててフォローすることも重要です。
営業が営業社員個人に任せきりになっている場合は、売れる営業マンのスキルやノウハウをチーム全体に共有することで成約率の底上げを図りましょう。
営業プロセスの共有と分析に役立つのが、顧客に対してのアプローチを提案資料とともに時系列で整理できるCRM(Customer Relationship Management)ツールです。社内の営業パーソンはCRMツールに蓄積された各案件の営業プロセスを閲覧することで、成功事例からプロセスを学ぶことができます。また、商談が失敗した原因も把握できるので、成績が芳しくない営業パーソンに対しては具体的な助言ができるようになります。
実務レベルでは、アポ獲得、商談化、案件化、契約といったステップごとに、顧客にどんな問いかけをするかをまとめたトークスクリプトを作ることも成約率の引き上げに効果があります。営業に不慣れな社員は商材の特徴を説明しがちですが、本当に大切なのは顧客の心理状況に応じてトークを変え「この商品は自分(会社)にとって必要である」と顧客に思わせること。営業パーソンが理想のクロージングをイメージできるよう、台本を複数パターン用意しましょう。
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各営業マンが営業の基本的なポイントを押さえて徹底することも重要といえます。成約率を高めるため押さえておきたいポイントは以下の通りです。
営業マンは自社の都合の前に、顧客の都合を考える必要があります。顧客は目の前の課題を解決するため、製品やサービスを購入するからです。自社の都合を優先すると成約には結びつきません。顧客の課題を解決する手段として、自社の製品やサービスを提案することが重要です。
顧客を優先する営業は、自社のメリットにもつながります。誠実な営業を行う会社と認識されるからです。継続的な提案を求められるなど、長期的な利益につながる可能性があります。
顧客の問い合わせに、素早く対応することも重要といえるでしょう。インターネットやスマートフォンの普及で、素早い対応を求める顧客が増えているからです。対応が遅れてしまうと「いい加減な会社」「顧客を軽視している」と捉えられる恐れがあります。すぐに対応できない場合は、その旨だけでも伝えるなどの対策が必要です。誠実に対応し続けることで、顧客が抱く信頼感は高まります。信頼感が高まることで、自社の提案を聞き入れる体勢も整います。顧客の問い合わせに素早く対応することも、営業の成約率を高めるため意識したいポイントです。
成約率を上げるためにはノウハウの共有が重要ですが、自社でトップセールスを誇る営業社員は多忙であり、営業ノウハウを体系的に整理して語るだけの時間がありません。だからといって営業部長がトップダウンで自己流のプロセスを押し付けたのでは、現場の混乱や反発を招く恐れがあります。
「商談の成約率を上げたい」「でも社内にリソースがない……」そんなジレンマを解決するには、営業経験豊富な社外の第三者とタッグを組み、営業部全体の課題を一つずつ解消していくことが有効です。
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