コラム
グローバルな競争が激化している昨今。単に高性能・高品質な製品を世に出すだけでは市場で勝ち抜くことはできません。事実、日本のお家芸とも言われた電化製品も2000年頃から海外メーカーや異業種からの参入が激化し、かつてのような競争力を失ってしまいました。
そんな中、注目されているのが「知財戦略」と呼ばれる考え方です。知財とは、文字通り知的財産のことですが、知財戦略とは単に特許を活用することではなく、知的財産によって競争力を確保・維持・強化しようという経営手法です。ここでは、知財戦略とは何か、経営戦略の中でどのような意味や重要性を持っているかについて解説します。
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目次
かつて電化製品で圧倒的なグローバルシェアを誇っていた日本は、一つのメーカーで何千という特許を保有していた技術大国でした。ところが、冒頭でも述べたように中国などアジア諸国の企業が次々に台頭してくると、コスト面だけでなく品質面でも優位に立たれ、やがて市場競争力を失い利益を出すことさえ難しい状況に追い込まれます。
確かに当時の日本は、技術力や保有する特許の数で他国を圧倒していました。ところが知財戦略という考え方がなかったために、外国企業の特許侵害に対抗できず、安易な市場参入を許してしまったのです。
こうした反省から生まれたのがまさに「知財戦略」。自社が開発した技術や製品を特許など知的財産権として資産化し、その権利を行使することで外国企業などの特許侵害に対抗するのが主な目的です。一方で、特定企業にライセンスを付与することで技術的優位に立つことも可能。特許侵害への対抗、ライセンス付与というブレーキとアクセルを踏み分けることで市場に参入障壁を創出し、利益の最大化を図ることが知財戦略の骨子です。
端的に言えば、知財戦略は市場を支配するための武器。これさえあれば、自社製品の市場にライバル企業が参入するのを容易に阻止できます。また、自社の技術が模倣され、コピー商品が市場に出回ったとしても迅速に対抗措置を講じることができます。それだけではありません。自社の特許技術が大企業から評価され、ライセンス契約を締結できれば莫大な利益がもたらされる可能性もあります。これは、技術力のある中小企業にとって飛躍のチャンスと言えるでしょう。
このように知財戦略を有効活用できれば、自社製品に有利な市場をつくり出せます。ただし、その効果を最大限に引き出すには事前の“仕込み”が重要。それが「技術の棚卸し」です。技術の棚卸しとは、特許調査を行うことで自社技術と他社技術を洗い出し、“特許マップ”として可視化することで、技術の競合状況や優位性を明らかにすること。これにより技術移転や共同開発の可能性を模索することが可能になります。
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特許はただ取得するだけ、保有するだけでは価値を生みません。にもかかわらず、どのメーカーでも保有するだけで何ら活用していない特許技術の一つや二つは必ずあるものです。それで何ら問題がなければよいのですが、特許は申請時だけでなく維持するのにもコストがかかります。これが業界で言う「特許年金」。何も活用していないのに固定資産税だけが毎年課税される不動産のようなものです。
知財戦略ではこうした遊休技術の活用も大きなテーマです。長らく未使用の特許があれば必要とする企業に売却したりライセンス付与したりすることで収益化し、そこから得た資金をもとに新たな研究開発を立ち上げるなどで有効活用を図りましょう。
日本には独自の技術を特許として多く保有しながら、その活用が十分に進んでいないために海外市場で苦戦を強いられている中小企業が少なくありません。しかし、そうした企業が知財戦略で情報武装すれば、まさに“鬼に金棒”ではないでしょうか。
もし、混戦する市場で業績アップに苦戦しているなら、自社が持つ技術やノウハウを「知財」として活用する方法を考えてみましょう。特許申請の方法がわからないからと言って放置している技術がある場合は、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
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