コラム
会社を存続していきたいけれど後継者がいない、廃業することなく従業員やサービスを守っていきたいと考えた際などに選択肢に挙がるのが「M&A」です。
ですが、M&Aで自社を譲渡しようと考えた際、譲渡価格に悩んでしまうことがあります。そこで、譲渡価格の算出方法や会社売買と事業売買の違いについてご紹介しましょう。
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目次
M&Aでは企業の合併買収を行うことになるため、譲渡する企業は適正な譲渡価格について考えなければなりません。当然ながら「できるだけ高く売却したい」と考えるものですが、適正な価格を設定することができないと、売却先が見つからない恐れがあるので注意が必要です。
理解しておかなければならないのが、売り渡す側と譲り受ける側では、価格に対する考え方が大きく異なることです。
売り渡す側は、これまで会社を経営してきた思い入れがあるため、それを反映した形で金額を検討するでしょう。
「経営を軌道に乗せるまで大変な苦労をしてきた」「うちの技術力を活かせれば大きな売り上げが目指せるはず」と考えているのであれば、なおさらです。
一方、譲り受ける側は、当然ではありますが「できるだけ安く買い取りたい」「適正価格か判断したうえで検討したい」と考えています。例えば「経営者が変更になることで業績が落ちてしまうのではないか」といった懸念があると、なかなか高額で買い取ることはできません。
このような状況の中、高姿勢で譲渡価格を設定すると、断られてしまう可能性があります。適正な価格設定ができないと「この会社を購入するより、自社で事業を立ち上げたほうが安く済む」と感じられてしまう恐れもあります。
自社が独自開発した技術などがあり、たくさんの会社から声をかけられているような場合は多少高姿勢な価格設定でも期待できますが、そうでない場合は注意が必要です。
期待できる譲渡価格は企業によって異なるので、自社の場合はどれくらいかを適正に算出する必要があります。
M&Aの譲渡価格を算出する際によく使われている一般的な計算式は「時価純資産+実質営業利益」です。詳しくご紹介します。
時価純資産とは実態純資産とも呼ばれるもので、「時価評価した資産」から「時価評価した負債」を控除したもののことを指します。現在、企業の価値がどれくらいかを判断するのに使われる数値です。
時価純資産の計算式は、「時価資産-時価負債」で表されます。資産から負債を引くのは、企業価値について考える際に、純資産だけではなく負債も含めて考慮しなければならないからです。
なお、税務会計で計算書を作成している場合は、損益を発生主義に変えるなど会計ベースに修正したうえで計算しなければなりません。
時価純資産の計算例ですが、売掛金や受取手形、貸付金などの営業債権のほか、有価証券や棚卸資産などの資産合計が3,000万円だったとしましょう。買掛金や未払金、賞与引当金などの負債合計は1,500万円だとします。
この場合、時価純資産は「資産3,000万円-負債1,500万円=1,500万円」です。
資産とは、具体的に以下の項目のことをいいます。
各資産について確認しましょう。
売上債権、売掛債権とも呼ばれるものです。企業は営業を行うことによって商品やサービスなどを顧客に販売します。そのうち、まだ代金を受け取っていない分を請求できる権利が営業債権です。
計算する際には、不渡り手形など回収不能な見込み額がある場合はそれらを控除しなければなりません。
有価証券などの資産がある場合は、これらも計算に含めます。上場会社の有価証券については証券取引所から公表されている取引価格を確認し、評価時点の金額で評価しましょう。
棚卸資産とは一般的に在庫のことであり、販売目的で保有している商品や原材料、製品などをいいます。ですが、中には在庫を抱えているものの今後売れる可能性が低いものもあるでしょう。そういったものについては計算時に評価を減額する必要があります。
長期にわたって保有する財産で、土地や建物、機械装置などのことです。土地や建物の価値については、不動産鑑定を依頼し、評価証明を取得しましょう。
有形固定資産の中にはその後利用される可能性がないものもありますが、その場合は廃棄・処理の費用などを含めた計算が必要です。
発明や音楽など形のないものが知的財産であり、これを守る制度が知的財産権制度です。この知的財産権によって将来獲得できると思われる収益などを考慮した上で計算が必要になります。
実質営業利益とは、本業で得られる利益のことを指します。計算のためには、先に営業利益を明確にしなければなりません。営業利益の計算式は「売上総利益-諸経費」です。
実質営業利益は、営業利益に節税対策額を加えて計算します。
例えば、売り上げの総利益が4,000万円で人件費が300万円、管理費が150万円の会社の場合、営業利益の計算式は「4,000万円-(300万円+150万円)=3,550万円」です。
節税対策額が400万円だった場合、それをプラスして実質営業利益は3,950万円ということになります。
M&Aの相場を言い切るのは非常に難しいことです。また、単純に「売り上げの○倍程度の価格で売却できる」ということもできません。
これは、企業によって利益や資産、負債などが大きく異なりますし、事業によっても将来性や業界の動向、市場規模などが異なるためです。そのため、自社の場合なら相場はどれくらいか?と考えるのではなく、ご紹介した方法でおおよその目安の金額を計算してみた方が良いでしょう。
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M&Aは、大きく分けると「会社売買」と「事業売買」の2種類があります。
会社売買とは会社自体を売買すること、事業売買とは会社が持っている事業を取引することです。
具体的にどのようなポイントが異なるのかについて解説します。
会社売却と事業売却は、目的が異なります。
一般的に、会社売却は業績の悪化や後継者の不在などにより、会社を継続することができなくなった場合に取られる選択肢です。
一方、事業売却は会社などで行っている事業の一部、または全部を譲渡する方法となります。事業譲渡とも呼ばれる方法で、売却するのは事業のみであるため会社がなくなることはありません。企業にとって不要になった事業を売却したり、一部売却によって資金調達したりする目的が大きいです。
買収を考えている企業からしても、すでに顧客がついている事業や、利益の上がる事業を買取ることにはメリットがあります。
事業売却と会社売却を比較した場合、一般的に高く売却できるのは会社売却です。会社売却では会社のすべての資産を売却する形になるためです。
会社売却のほうが高く売却しやすいことから、売却予定の事業を子会社化することによって会社売却し、通常の事業売却よりも高い金額で買収してもらっている企業もあります。
M&Aで自社を売却する企業側からすれば、少しでも高く売りたいのは当然のことです。
ですが、買収する側はできれば安く、または適正価格で買いたいと考えているので、両者の希望がかけ離れてしまうと契約は成立しません。
M&Aの譲渡価格に相場はありませんが、譲渡価格を決める際には時価純資産や実質営業利益などを計算し、具体的な数値を出したうえで適正な金額を検討しましょう。
自社のみで検討するのはなかなか難しいので、専門家の力を借りるのもおすすめです。
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