新規事業を立ち上げたい!課題やプロセス、フレームワークを紹介 | 顧問バンク

コラム

新規事業を立ち上げたい!課題やプロセス、フレームワークを紹介

新規事業やサービスは、勢いだけで立ち上げると失敗に終わってしまうケースもあります。慎重に準備を行い、計画を練ることが新規事業を成功させるためのステップと言えるでしょう。ここでは、新規事業立ち上げ時に直面しがちな課題や、立ち上げ時に役立つフレームワークについてまとめました。

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新規事業立ち上げとは

新規事業の立ち上げとは、新しい事業を開始することです。既存事業のある企業においては、事業の多角化あるいは事業転換を意味すると考えればよいでしょう。新規事業は、大きく以下の3つに分かれます。

【新規事業の種類】

  • イノベーションを活用して新製品を生み出す
  • ビジネスの仕組みを変革して新しい強みを生み出す
  • 競合他社が気づいていない市場を見つけて有利なポジションを獲得する

新規事業の特徴

新規事業の特徴を人材・市場・成功までの期間で分析すると以下のようになります。

【新規事業の特徴】

人材新しいアイデアを実現できる人材が求められる
市場顧客の情報が不足している
成功までの期間ゼロからのスタートになるため、成功まで時間がかかる


新しいアイデアを実現できる人材が必要になる理由は、既存事業のように蓄積されたノウハウがないからです。自分で考えてアイデアを実現できる人材が求められます。

また、既存事業とは異なる市場を狙うと、顧客の情報が不足します。したがって、既存事業のように、事業戦略をスムーズに立案することはできません。

以上の特徴があるため、結果が出るまで時間がかかります。多くの場合、試行錯誤を繰り返しながら、成功の糸口をつかむことになるでしょう。

新規事業を立ち上げるタイミング

新規事業の立ち上げを検討したい主なタイミングは以下の3つです。

【新規事業立ち上げのタイミング】

  • 本業の業績が悪化していて改善を見込めないとき
  • 事業のリスクを分散したいとき
  • 余剰資金が生まれたとき

以上のほかでは、事業を継承するときに新規事業へ事業内容を変更するケースもあります。新規事業の立ち上げは、様々なシーンで検討される戦略といえるでしょう。

新規事業立ち上げをするメリット

新規事業を立ち上げる代表的なメリットは次の3つです。

【新規事業立ち上げのメリット】

  • 経営リスクを分散できる
  • それぞれの事業を強化できる可能性がある
  • 人材を育成できる

それぞれのメリットについて説明します。

経営リスクを分散できる

新規事業の立ち上げは、経営リスクの分散につながります。既存事業の衰退に備えられるからです。現在は好調な事業であっても、やがては衰退を迎えることが多いといえます。ひとつの事業に頼っていると、衰退したときに企業の業績まで悪化してしまいます。業績が好調なときに新規事業を起ち上げておけば、既存事業が衰退しても新規事業でカバーできる可能性があります。だから新規事業の立ち上げは、経営リスクの分散につながるのです。

それぞれの事業を強化できる可能性がある

新規事業を立ち上げることで、既存事業・新規事業を強化できる可能性があります。新規事業により、幅広い顧客のニーズに対応するとともに顧客満足度を高められるからです。例えば、ガソリンスタンド内にコンビニを出店することで、給油目的の顧客をコンビニ、買い物目的の顧客をガソリンスタンドへ誘導できます。新規事業を計画的に展開することで、既存事業にも良い影響をもたらせるのです。

人材を育成できる

新規事業を社員に任せることで、経営者感覚を身に着けた人材を育成できます。既存事業では経験しづらい意思決定、市場開拓、損益への責任など、さまざまな経験を積めるからです。経営人材を育成したい場合は、小規模な新規事業を起ち上げて社員に任せるとよいかもしれません。ただし、失敗したときのリスクについては十分な注意が必要です。

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新規事業立ち上げで押さえるべきポイント

新規事業を立ち上げる際は、以下の点に注意が必要です。

顧客ニーズを十分に理解する

新規事業は、顧客のニーズに基づき起ち上げる必要があります。顧客のニーズと新規事業の間にずれがあると、商品やサービスを購入してもらえないためビジネスとして成立しないからです。顧客のニーズは、想定顧客のインタビュー、既存顧客の分析のほか、ペルソナ分析などのフレームワークで見つけられます。

事業撤退のラインを明確化しておく

新規事業が必ず成功する保証はありません。したがって、参入前に撤退のラインを設定しておく必要があります。撤退ラインを設定しておかないと、赤字が続いて企業経営に悪影響を与えるかもしれません。新規事業の撤退ラインは、事業の成長スピード、KPIの達成状況などをもとに検討するとよいでしょう。

市場参入のタイミングを見極める

適切なタイミングで市場参入を果たすことも重要です。どれだけ優れたビジネスプランでも、市場参入のタイミングを誤ると成功の確率は低くなります。タイミングを誤ると、市場が衰退する、競合他社が参入するなどの事態が起こりうるからです。市場環境や競合他社の動向などをもとに、タイミングを見極める必要があります。

事業計画を十分に練る

ただし、焦りすぎもおすすめできません。市場参入を果たす前に、事業計画をしっかりと練っておくことが重要です。事業計画を練っておかないと、事業の方向性や具体的なアクションが定まらないうえ、市場参入後の評価・改善も行いづらくなるからです。また、事業計画は、金融機関から資金を調達する際にも必要になります。新規事業の成功率を高めるため、欠かせない取り組みです。

競合他社との違いを明確化しておく

以上のほかでは、自社だけの強みを明確にしておく必要もあります。顧客が自社を選択する理由になるからです。理想的な自社だけの強みは、競合他社が提供できていない顧客のニーズを満たす価値といえるでしょう。品質・機能・アフターサービス・実績などで差別化を図れます。

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新規事業の立ち上げでよくある課題

新規事業を立ち上げる際は、以下で紹介する3つの課題をクリアする必要があります。

人材

新規事業の立ち上げには、プロジェクトマネージャーの起用が必須です。しかし、現在別の事業で活躍している人材を、簡単に新規事業立ち上げに回すことはできません。そこで発生するのが、「そもそも誰に事業を任せるのか」という問題です。

必要コスト

新規事業の立ち上げには予算が必要ですが、どの程度の費用が必要か正確な見積もりができないケースもあります。この場合は想定した予算を大幅に上回ってしまいがちで、その結果、事業が赤字からのスタートになったり、資金不足のために計画がスムーズに進まなかったりすることも。また、正確な見積もりのためには、人的コストや場所などの要素も無視できません。

手法

これまでに自社が築いてきた人脈や技術力などを新規事業に活かすことができれば、新たな事業分野における地位も確立しやすくなるでしょう。しかし、どのようにすれば新規事業に自社の持つ知見を活かすことができるのかわからないケースもしばしば見られます。そのため、人脈・技術力・知見を活かすための「手法」についても、新規事業立ち上げ時の課題となります。

新規事業立ち上げまでのプロセスとは?

新規事業の立ち上げは、多くの場合5つのプロセスによって行われます。

1.ビジョンの策定

ビジョンが定まっていなければ、新規事業の目指すゴールも定まりません。まずは、目指す方向性を決めましょう。

2.ビジネスプランの策定

ビジネスプランは、ユーザーや自社、他社に対する分析結果と新規事業に関するアイデアを元に策定されます。

自社そのものや、新規事業で取り扱う予定の自社製品の強みがどこにあるのかを検討し、市場における競争力を分析しましょう。この際、後述する「フレームワーク」を利用するのが効果的です。それと同時に、新規事業に対するアイデアを広く募り、方向性を定めていきましょう。

3.立ち上げを行う

新規事業をスタートさせるための資金を確保するとともに、立ち上げメンバーを決定します。その後、製品開発や販路の確保、実際の販売などを順次行っていきます。

4.結果の分析

新規事業の立ち上げは、販売がゴールではありません。ユーザーの反応や売上、実際にかかったコスト、製品の品質などを再度分析・評価することで、次のステップにつなげていく必要があります。

5.分析結果を元に事業の拡大化を目指す

製品や事業に対する評価を元に、さらに事業を拡大していくためにはどうすればいいのかを検討・実行します。

新規事業立ち上げに役立つフレームワーク

新規事業立ち上げの際は、業界やユーザー、自社の分析を行い、適切な事業計画を練る必要があります。計画が適切か分析する際はフレームワークを利用するのが便利です。どのような方法があるのか知っておきましょう。

SWOT分析

SWOTとは、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの英単語の頭文字を取った言葉です。この4つを知ることで、自社の内部環境と外部環境を分析することができます。

強みと弱みは自社と競合を比較した際のポイント、機会は新規事業立ち上げに有利となる外的要素、脅威は反対に不利になると考えられる外的要素のことです。これらの要素を踏まえ、自社の強みと新規立ち上げに有利となる外的要素を活かし、弱みや脅威が大きなリスクとならないビジネスプランを策定します。

ペルソナ分析

自社が想定するターゲットに合致するペルソナを設定し、該当のペルソナについて掘り下げることで、自社に何が求められているのかを分析する手法です。

このとき、できるだけ具体的なペルソナを作ることが重要です。作り上げたペルソナが実際のユーザー像に合致していれば、求められる製品やサービスをより具体的に理解できるでしょう。しかし、想定したペルソナが実情に即していなかった場合、ペルソナ分析を行う意味がなくなってしまうという難しさもあります。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップとは、簡単に言えば縦軸と横軸で構成された図のことです。縦軸、横軸に何を設定するかという定義はありません。選択肢が無数にあるからこそ、縦軸、横軸に何を設定するかは非常に難しい作業と言えるのです。

例えば、ファッションブランドであれば縦軸を「価格」にし、横軸を「年齢層」に設定します。そして、自社が市場においてどのポジションにいるかを考えます。自社だけでなく、競合他社がどこに位置するのかも併せて検討することで、業界内における自社の立ち位置や、立ち位置が近い競合他社はないかといったことを客観的に分析できます。

特に、すでに有力な競合他社が存在する業界に新規参入する場合は、ポジショニングマップの作成が必須です。

MVV

新規事業の方向性を定めるため活用したいのがMVVです。MVVは次の単語の頭文字をとった略語となっています。

【MVV】

  • Mission(使命)
  • Vision(理想)
  • Values(価値)

Missionは新規事業の目標、VisionはMissionを達成するための組織の状態、あるいはMissionを達成したあとの組織の状態、Valuesは新規事業の価値基準、スタッフの行動指針を意味します。MVVは新規事業の拠り所となるため、スタッフ間で共有しておくことが重要です。

3C分析

3C分析は、市場全体を俯瞰的に分析できるフレームワークです。具体的には、以下の切り口で市場を分析できます。

【3C分析】

  • Customer(顧客・市場)
  • Company(自社)
  • Competitor(競合他社)

Customerでは顧客のニーズ・市場規模・市場成長性、Companyでは自社の強み・弱み・自社の戦略、Competitorでは競合他社の強み・弱み、競合他社の戦略、競合他社のシェアなどを分析します。3C分析を活用することで、新規事業の可能性を探れます。

VRIO分析

VRIO分析は、自社の経営資源を分析するフレームワークです。VRIOは以下の単語の略語となっています。

【VRIO分析】

  • Values(経済的価値)
  • Rarity(希少性)
  • Imitability(模倣困難性)
  • Organization(組織)

自社の経営資源をValues・Rarity・Imitability・Organizationの順で分析します。それぞれの概要は次の通りです。

Values当該経営資源の有無で売上が増大するか
Rarity当該経営資源は希少か
Imitability当該経営資源は競合他社が簡単に模倣できないか
Organization当該資源を活用する組織は整っているか

自社の経営資源は、顧客に価値を提供するまでの流れを意味するバリューチェーン(例えば、仕入・製造・営業・販売)を分析して把握するとよいでしょう。VRIO分析を行うことで、自社の経営資源の優位性がわかります。

ABC分析

新規事業立ち上げ後、在庫管理や品質管理などに活用したいフレームワークがABC分析です。ABC分析は、全体の大部分は全体を構成する一部の要素が作り出していると考えるパレートの法則(=80:20の法則)に基づいています。ABC分析の基本的な流れは次の通りです(ここでは商品の売上を用いています)。

【ABC分析の流れ】

  1. 新規事業で扱っている各商品の売上を算出する
  2. 商品を売上順に並び替える
  3. 上から順番に累積額を算出する
  4. 累積額を総売上高で除して累積構成比を算出する
  5. 商品を任意のABCの3グループに分ける

架空の商品1~5で、以上の流れを実践すると次のようになります。ここでは、累積構成比50%までをAグループ、80%までをBグループ、100%までをCグループとしています。

 売上累積学累積構成比ABC分類
商品150万円50万円50%A
商品230万円80万円80%B
商品310万円90万円90%C
商品48万円98万円98%C
商品52万円100万円100%C

以上の分類から、売上においては商品1と商品2の重要度が高いことが分かります。ABC分析は、売上だけでなく、売上数量や在庫、原材料費などを切り口に行うことも可能です。

以上の表は、降順に並べられた棒グラフと累積構成比を表す折れ線グラフで構成されるパレート図を用いて表すこともできます。パレート図を用いれば、各商品などの重要度が視覚的にわかります。

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市場やユーザー、競合他社、自社の分析が適切にできていなければ、新規事業を成功させることは難しいでしょう。客観的に事業の収益性を見極め、他社との差別化を図るためには、外部の専門家によるコンサルティングの活用が効果的です。

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